旅館窓辺にて

川のせせらぎの音、視界を覆う一面の緑

 

私は今旅行をしていて、

旅館の部屋の窓辺にいる。

癒される…

ここはまるで異空間だ。

 

旅行とはどうしてこんなにいいのだろう。

旅行行く前に「どこいこうかなぁ」とワクワクしながら調べたり、

旅館までの車移動でお菓子を食べながらたわいもない会話をしたり、

特産物を食べてお互いに感想を言い合ったり、

体を思いっきり伸ばしておっきなお風呂に入ったり、

絶品のディナーでお腹一杯にしたり…

満ち足りた気持ちを提供してくれる。

 

子供の頃に戻ったような感覚もある。

私は今社会人なのだが、

そのようなスイッチを押してくれるのが

旅行のような気がする。

私が両親と行ったからかもしれない。

子供の頃に学校の長期連休で行った楽しかった旅行を今もしているかのような錯覚に陥る。

 

しかし、一方で大人であることを

忘れられずにいる自分もいる。

 

今回の旅行は両親の好意で旅費を奢ってもらった。

もちろん、ありがたいし、嬉しい気持ちもあった。

しかし、それ以上に大人になった自分がいつまでもその好意に甘えていていいのかという問いかけはぐるぐると巡っている。

私が奢るよ!と強く言えない自分に情けなくなった。

 

また、「自分の旅費は、自分で出すよ」と言った時に

「いいの、私たちも元気で旅行行けるのあと何年もないから。」

と母親が答えたのだが、

これが私の中でせつなく響いた。

当たり前なのだが、私だけでなく、

両親も歳をとっている。

体力や体調もおちてくるし、

考えたくもないが死も近づいている。

 

両親が居なくなったら、

私に何が残るのだろうか。

帰る場所もないし

いつも優しく迎えてくれる人もいなくなる。

…ダメだなぁ、

 また自分の事ばかり考えている。

 嫌になる。

まだ大人になれていない自分がいた。

 

私が両親に出来ることは何だろうか

自分はこれからどう生きていこうか

答えのない問いに

このせせらぎも答えてはくれなかった。