永遠の命

『人の記憶のクラウド保存』

 

先日、父とドライブをしている時にこの話をした。

なんじゃそら!と思っている人も多いだろう。

 

これは、最近父がPrime Videoで見たドラマだか映画のどっちか忘れたが、

それのテーマだそうだ。

『脳の記憶をデジタルデータにし、インターネット上に保管。

それをいつでも必要な時に取り出せるようにする。』

それが可能となった未来を描いたSF作品とのこと。

 

これって、なんの役に立つの?

そう質問する人もいるだろう。

私もその話を始めた時は、同じ風に疑問を浮かべていた。

 

色々と役に立つ点は他にもあるだろうが、父はこれをあげていた。

『永遠の命』

つまり人の記憶をデータとして残しておけば、

亡くなった人の記憶だって、呼び起せる。

体はないが、それの代わりとして、

例えばデジタル空間のアバターやロボットにそのデータを入れ、

それとともに生活すれば、死んだ人がまるで生き返ったかのように

一緒にいることができる。

データだけであれば、朽ちていくものがないため永遠だ。

 

父はこれを見て、「あったらいいなと思った」と笑いながら言う。

「母さんが亡くなっても、

 同じようにやかましくしゃべってくれればいいなー」

父も65歳で、高齢者だ。

それに加え、最近体の調子も悪くなっていることもあってか、

死に関して話題にあげることが最近多くなってきたように思う。

そういった話の中でも、生涯苦楽をともに過ごしてきたパートナーである母との別れは

父にとって、私の想像を絶する悲しみなのだろう。

 

私はその時そんな思いをくみ取れず、このように言い返した。

「でもそれって、人との別れが軽薄なものになってしまうと思うよ。

 生きている人も過去に引っ張られてしまって、

 今を一生懸命生きなくなってしまうんじゃない?

 それにあくまでデータだから、どこかで本物とは違うところを見出して、

 逆につらくなってしまうんじゃない?」

これも確かに間違っていないだろうと思っている自分もいる。

 

ただ人の死って、そんなに簡単に受け入れられるのだろうか。

その人との関係が親密であればあるほど、

受け入れがたくて、「その人がいないなら死んでもいい」と

思ってしまう人だっていないとは言い切れないだろう。

私が両親と死別したらそのように思ってしまうのは、想像に難くない。

そんな人をこの世につなぎ留める手段に

『人の記憶のクラウド保存』はなるかもしれない。

偽りだとしても、その人の希望になればよいという考えだってある。

 

『人の記憶のクラウド保存』は実用化される時が来るかもしれない。

その時、亡くなった人の記憶を取り出し、

あなたは「永遠の命」と生活したいと思うだろうか。

そうすることを否定するだろうか。

 

そう遠くない未来に、答えがでるかもしれない。